ワールドカップを終えて
4年に1度のサッカーの祭典ワールドカップ。
2006年ドイツ大会はイタリアの優勝で幕を閉じましたね。
今大会は過去に例を見ないくらい強豪国が順当に勝ち進み、ベスト8が決まった時点では、ブラジル、イタリア、アルゼンチン、ドイツ、イングランド、フランスと数少ない優勝国の中のなんと6チームが残るというサッカーファンにとってはたまらない大会となったことでしょう。
今大会の波乱が最も起きたのはベスト4を決める4試合と言って間違いないでしょう。
イタリア対ウクライナだけはイタリアが順当な勝ち上がりを見せました。
しかし王者ブラジルが、予選リーグで韓国などに苦戦していたフランスに敗れ、イングランド史上最強とうたわれたイングランドは、エリクソン監督の下、非常につまらないサッカーをベースとしており、デコを欠いたポルトガルに土を付けられています。
そして今大会最も美しく、面白いサッカーを見せていたアルゼンチンが、批判が耐えなかったドイツに敗れ去っています。
現在は3トップを張るチームも多く、世界的に攻撃サッカーの時代といわれています。
ベスト8の国の中でも守備的な国はイタリア、フランス、ウクライナくらいでしょう。
伝統的な守備の国、イタリアでさえも、名将リッピは攻撃的なチームをうたってワールドカップに望んできました。(ふたを開けてみれば、他の国に比べ、多少守備的な面が多く見られた。)
エース、シェフチェンコあってのカウンターサッカーを展開するウクライナは今大会きっての守備的なチームでした。
ジダン、アンリと攻撃陣にタレントをそろえたフランスは守備的と言っても、他のチームに比べてであり、実際にはどちらにも偏らない総合的なチームと言っていいかもしれません。
準決勝ではイタリアがリッピの積極的な攻撃的な采配でドイツを下し、フランスはアンリのもらったPKにより決勝へとこまを進めましたね。
最後になってみれば、いくら攻撃サッカーの時代だと言われていても、守備的な2チームが勝ちあがる結果となりました。
「いいストライカーがいれば試合に勝てる。だがいいディフェンダーがいればタイトルがとれる」
というジョン・グレゴリーの言葉を実感するワールドカップとなりました。
もちろん両チームとも攻撃陣にタレントをそろえていることは間違いでなく、総合力で他のチームを勝っていたから決勝の地を踏むことができたことは言うまでもありません。
大会前から前評判の高かったイタリアと、優勝候補に挙げられる事のなかったフランスとの対戦はご存知の通りイタリアの勝利という形で幕を閉じました。
ジダンの退場は本当に印象的でした。
W杯の決勝が引退試合で、引退試合に退場しながら、優勝はできなかったもののMVPを獲得するという最高にかっこいいですね。
世界一を決める祭典で、一番活躍したとされる選手が現役を引退するのだから、サッカーというスポーツは不思議ですね。
もちろん、僕の中でのMVPはジダンではなかったと思っています。
ジダンは守備面での活躍がほとんど見られない上に、優勝もしておらず、7試合で2回もレッドカードをもらっており、3得点1アシストといっても、そのうちの2得点はPKによるもので、本当はPKをもらった人こそ評価を受けるべきだと考えるからです。
フランスであれば、守備面、攻撃面(2得点2アシスト)の両方で大車輪の活躍を見せたヴィエラこそが、MVPにふさわしいといえるでしょう。
そしてもっとふさわしい人物はイタリアのカンナバーロとブッフォンの2人と言っていいでしょう。
大会を通して2失点という脅威の数字を残したイタリアの守備を支えたのは、間違いなくこの2人です。
リッピ監督の機能美さえ感じさせる守備の戦術はもちろん賞賛に値します。
それを体現し、なおかつ目を見張るプレーを見せ続けた2人にはMVPをとってもらいたかったですね。
神がかり的なスーパーセーブをし続け、オウンゴールとPKによる失点しか許さなかったブッフォンと、その直前で世界最高のフィルター役となったカンナバーロこそMVPにふさわしいです。
ブッフォンは以前、
「フットボールとは極めてシンプルだ。俺がシュートを全て止めれば、チームが負ける事はないのだから」
という発言をしていましたが、思い出さずにはいられないプレーを今大会みせてくれました。
MVPは人の主観によって決められます。
世界最高峰のプレーヤーの引退がかかっていたとはいえ、そこは公平な判断をしてほしかったです。
大会のMVPは世界最高のプレーヤーに贈られる賞ではなく、世界最高のプレーをみせた人に贈られる賞であるのだから・・・。