人々の記憶に残ること…。
リーガ・エスパニョーラを牽引する2強,FCバルセロナとレアル・マドリッドの一戦は,こう評される.
「エル・クラシコ」
今回はバルサがホームのカンプ・ノウでレアルを迎えうつ.
世界が注目する一戦の狼煙(のろし)が上がった.
この試合バルサは,3-4-3という超攻撃的なスタイル.
3トップにはメッシ,ロナウジーニョ,エトーと超快足3トップを起用.
対するレアルはいつもと変わらぬ布陣でクラシコをむかえた.
試合はまず,ファン・ニステルローイのきれいなゴールでレアルが先制.
前半からゲームが動き,スペクタクルな試合が期待された.
1対0のこの時点では,試合を支配するようなワンマンショーが繰りひろげられることは誰もが予想できなかっただろう.
10代にしてバルサでレギュラーを張り,敵将カッペロに「ドイツW杯は彼のための大会となる」とまで言わせた世界が認める天才,リオネル・メッシ.
そう,今日の主役はこの少年となる.
先制を許したホームのバルサは,メッシが鋭い切れ味のドリブルで,序盤からカンバヴァーロを中心としたレアルディフェンス陣を切り崩す.
まずは1点ビハインドのこの場面でメッシが,エトーの強烈なグランダーのパスをいとも簡単にトラップしゴールへと繋げた.
完璧なポジションどりは完全にレアルディフェンスの裏をとった.
圧巻のプレーであった.
伝説の幕開けとなるゴールだった.
レアルはまたしてもファン・ニステルローイの得点で勝ち越すが,その得点をまたもメッシが無効化する.
再びメッシがゴール前で仕事をしたのだ.
そう,世界最高峰の戦いで,10代の少年が2点も奪ってみせたのだ.
しかしバルサはオレゲールの退場で,数的不利となり前半を折り返す.
さらに後半に入りバルサは,エトーを交代させた事で,前線の流動性を失い,攻撃が実を結ばない時間が続く.
そんな中,後半ゴールを先に奪ったのはレアルだった.
セルヒオ・ラモスのヘディングがバルサゴールへと吸い込まれた.
非常に効果的な加点だった.
2度も追いすがったバルサを「3度目の正直」を言わんばかりの加点で突き放したレアルが,カンプ・ノウでのレアルの20年ぶりの勝利を限りなく手繰り寄せた.
オレゲールの退場も,1点を追う立場になるとより大きな重圧となった.
しかしその重圧を1人の少年ははねのけてみせた.
最後のビックプレーを夢見たファンはいただろうか,彼のような少年に期待したファンはいたのだろうか.
そう,メッシは2度ではなく,3度もレアルのゴールネットを揺らしたのだ.
パスをうけ,鮮やかなステップと,誰にもついて来られないようなスピードで振り切ると,振りぬいた左足から放たれた強烈なシュート.
ボールはカシージャスの手など気にもせず,自ら好んでレアルゴールに飛び込んだように見えた.
生きているかのように….
そう,それは偶然ではなく必然だったのかもしれない.
「3度目の正直」を信じたレアルイレブンに「2度あることは3度ある.」と言わんばかりのこの日の主役は,未だに19才だというのだから,世界は彼にどんなに夢をみればいいのだろう.
彼は人々の夢を超える,そう,天才の域を超える存在なのかもしれない.
メッシという偉大な少年のハットトリックは.20年間守り続けたバルサの誇りを守り,なおかつ後世にのこる新たなる伝説を生んだ.
彼は,人々の記憶に残る事に長けすぎている.
できるかぎり彼の成長をこの眼に焼き付けたいものだ.